「一匹が何かに驚いた瞬間、ほかのデグーたちまで一斉に警戒し始めた」
多頭飼いをしていると、そんな光景を見たことがある方もいるのではないでしょうか。
一匹が突然立ち止まると、ほかの子も動きを止めたり、一匹が警戒するような鳴き声を出すと、周囲のデグーたちも緊張した様子を見せたり。
デグーは非常に社会性の高い動物で、仲間の行動や鳴き声から周囲の状況を読み取っています。
研究では、仲間が感じている「怖い」という状態が、ほかのデグーの行動にも影響することが確認されています。
今回は、そんなデグーの「感情伝染」や「観察による恐怖学習」についてご紹介します。
仲間の反応から「危険かもしれない」と判断する
野生動物にとって、危険をできるだけ早く察知することは命に関わります。
自分自身が天敵を見つけてから逃げていては、間に合わないこともあります。
そこで社会性のある動物にとって重要になるのが、仲間の反応です。
近くにいる仲間が突然警戒したり、逃げたり、警戒音を出した場合、
「自分にはまだ見えていないけれど、何か危険があるかもしれない」
と判断することができます。
デグーでも、こうした仲間の反応を利用して危険を学習することが研究されています。
仲間が怖がる様子を見るだけで学習する
デグーを使った研究では、別のデグーが不快な刺激を経験している様子を観察した個体が、その後、その場所や状況に対して恐怖反応を示すことが確認されています。
つまり、自分自身が同じ怖い経験をしていなくても、
「仲間がここで怖がっていた」
という情報から危険を学ぶことができるのです。
さらに興味深いのが、相手との関係性です。
研究では、見知らぬデグーよりも、普段一緒に生活している仲間が恐怖を経験している様子を見た場合のほうが、観察していたデグーに強い恐怖学習が見られました。
デグーにとって「誰が反応しているか」ということも重要なのかもしれません。
「感情伝染」とは?
動物行動学では、ある個体の感情状態が、ほかの個体の状態や行動に影響する現象を「感情伝染」と呼ぶことがあります。
例えば、一匹が強く警戒することで、周囲の仲間たちも警戒状態になるような現象です。
これは人間のように、
「この子はいま怖い気持ちなんだ」
と頭の中で言葉にして理解しているという意味ではありません。
仲間の動き、姿勢、鳴き声、匂いなど、さまざまな情報を受け取り、それによって自分自身の行動や感情状態が変化していると考えられています。
そのため「人間と同じ共感能力がある」と断定することはできませんが、仲間の状態に強く影響を受ける社会性を持っていることは、デグーの大きな特徴のひとつです。
鳴き声も重要な情報になる
デグーはコミュニケーションにさまざまな鳴き声を使います。
恐怖学習について調べた研究でも、恐怖を経験しているデグーが発する鳴き声のパターンと、それを見ているデグーの学習との関連が報告されています。
私たちには同じような鳴き声に聞こえていても、デグー同士では声の出し方やタイミングから細かな情報を受け取っている可能性があります。
仲間の姿を見るだけではなく、声を聞くことも、周囲の状況を判断するための大切な手がかりなのです。
飼育環境でも仲間の様子は影響する?
家庭で飼育されているデグーでも、一匹が強く警戒するとほかの子まで落ち着かなくなったり、普段と違う様子を見せたりすることがあります。
ただし、
「一匹が病院に行ったから必ず群れ全体が不安になる」
「飼い主が緊張すると、その感情がそのままデグーに伝染する」
とまでは言い切れません。
飼育環境では、知らない匂い、物音、ケージ内の変化、仲間の行動など、さまざまな要素が影響します。
それでも、デグーがお互いの行動をよく見て生活していることを考えると、一匹の変化がほかの個体の行動にも影響する可能性は十分にあります。
デグーは仲間からたくさんの情報を受け取っている
デグーは、ただ同じケージの中で一緒に暮らしているだけではありません。
鳴き声を聞いたり、仲間の行動を観察したりしながら、
「今は安全なのか」
「警戒したほうがいいのか」
「何かいつもと違うことが起きているのか」
といった情報を得ながら生活しています。
一匹が警戒すると、近くにいる仲間も反応する。
そして、仲間が経験した危険を見ただけでも、その状況を学習することがある。
こうした行動を知ると、デグーがどれだけ周囲の仲間を意識しながら生活している動物なのかが分かります。
多頭飼育をしている方は、一匹だけを見るのではなく、ぜひ群れ全体の動きを観察してみてください。
誰かが鳴いた瞬間にほかの子がどう反応するのか。
一匹が警戒したときに、どの子が最初に反応するのか。
普段何気なく見ている行動の中にも、デグーたちが仲間から情報を受け取りながら暮らしている様子が隠れているかもしれません。
※デグーの恐怖学習や社会行動について研究報告はありますが、すべてのデグーが同じ反応を示すわけではありません。また、突然強い警戒反応が続く場合や、食欲低下・活動量低下などが見られる場合は、単なる「仲間の感情の影響」と決めつけず、体調や飼育環境の変化も確認してください。